思いもよらない楽譜反転技に驚いた
ラフマニノフの
 パガニーニの主題による狂詩曲 ですが

この曲には もうひとつ 
とても興味深い技が仕込まれていました

それは 曲の背景に悪魔が隠れていて
ときどきひょこっと顔を出すという 
なんだか気持ち悪い仕込みでして、、、

怒りの日 
というグレゴリオ聖歌の
冒頭部分の  
なんともおどろおどろしいフレーズがあるのですが

怒りの日の楽譜が書かれた美しい装飾が施された中世の本

西洋のクラシック音楽では 
死や悪魔のシンボルとして
このフレーズが用いられることが多いそうです

そう言われてみると 
確かにオーメンなどの恐怖映画の怖い場面で
このフレーズをよく耳にします

キリストと悪魔が描かれた壮大な買いが

で ラフマニノフは 
このフレーズを
パガニーニの主題による狂詩曲のそこかしこに 
こっそりとしのばせていて

パガニーニのオリジナルメロディと 
この 怒りの日のメロディが
織り交ざる形で曲全体が進行している
仕組みになっています

加羽沢さんが 
実際にピアノを弾きながら
どの部分に 怒りの日が隠れているかを
解説してくれましたが

怒りの日の音符が 
メロディの何音符かづつ飛ばした部位に
分割してしのばされていて 
曲全体を注意深く聴いていると認識できる

そんな裏ワザも使われているので 
びっくりです

特に最後の24番目のアレンジでは

オーケストラの管弦は 
怒りの日のメロディ

ピアノは 
パガニーニのオリジナルメロディ で

両者が 
駆け引きをしながら進行していくスタイルで
その駆け引きによって 
曲全体が最後に向けて盛上っていく

いやー すごいなあ  
びっくりしました!

パガニーニは 
あまりに卓越したテクニックの持ち主だったので
その才能を得るため 
悪魔に魂を売ったとまで揶揄されたそうですが

パガニーニ

そんなパガニーニのオリジナル曲に
敢えて悪魔を連想させる 
怒りの日のメロディを
潜在意識に訴えかけるように 
サブリミナル効果を見込んで
しのばせていく

このアイデアは凄いけれど

これって 
パガニーニに対するオマージュというより
喧嘩をうっているようにも感じられるのですが
どうなのでしょう?(笑)

でも 
悪魔を表象する怒りの日のメロディに
対抗するように
パガニーニのメロディをぶつけるということは

パガニーニを天使として 
崇めているということなのでしょうか?

こんなことを思いながら 
ラフマニノフのこの曲を聴いたことは
今まではもちろんなかったのですが

でも そう思って聴いてみると
なんとなく天使と悪魔の葛藤が
見えてくるような気もして
なんだか妙な気分です(笑)

天使と悪魔

それにしても 
ラフマニノフ すごい!

ラフマニノフ

そして番組では 
曲の最後のピアノの終わり方に関しても
面白い会話が交わされていました

オーケストラとピアノの
壮大に盛り上がった駆け引きのあと

最後にピアノが何拍子かポロッと弾かれて 
あっけなく終わる

このあっけないピアノの終わり方が
意味するのはなんなのか?

はたして 天使と悪魔の 
どちらが勝ったのか?

ラフマニノフは 
敢えてそれをはっきりわかるように明示せず
聴く者に考えさせるように
しているのではないかと

天使と悪魔 善と悪の戦いは 
日常生活でごく普通にあるものですが

そんな身近な出来事を 
聴く者に無意識に訴えかけて

そして最後に
あなたは 善と悪 どっちが勝ったと思う? 
と問うてくる

これも おしゃれです!(笑)

天使と悪魔に片腕ずつ引っ張られる人

ゲストの日本文学研究者の
ロバート・キャンベルさんが
文学にもこういう終わり方があって
そういう作品の方が印象深い 
と言われていましたが

確かに
聴き終ったあと 
読み終わったあとに

聴き手や読み手に 
作者は何を訴えたかったのかな 
と考えさせる

そんな作品は 
音楽にしても文学にしても 
とても気になります

最後にロバート・キャンベルさんが

この曲は
ラフマニノフの
パガニーニに対するオマージュであることは間違いないけれど

ちょっと パガニーニをからかうような
そんなウイットも効いているのでは?

と 感想を述べられていたのが印象的でした

今回のらららクラシック 
いつにも増して 
とても興味深くて楽しめました!
高橋医院