女性ホルモンのエストロゲンには
糖尿病や脂質異常症の発症を
防ぐ作用があります

ですから
女性はエストロゲンの分泌量が減少する閉経前後から
エストロゲンの働きが消え
生活習慣病を発症しやすくなることを
説明しましたが

実は
男性ホルモンのテストステロンの動態も
生活習慣病の発症に影響を及ぼします

テストステロンの構造式

女性の閉経と異なり
男性では
性ホルモンが急激に減少することはありませんが
それでも加齢にともない
テストステロンの分泌は徐々に低下してきます

30歳頃から 年に1~1.5%ずつ 
緩やかに減少していくと言われ

60歳以上の19%
70歳以上の28% 
80歳以上の49%が
基準値以下になるとされています

男性ホルモン 女性ホルモンの年齢による推移を示すグラフ

但し 加齢による減少の程度には 
女性と異なり大きな個人差があります

そして 
女性ホルモンと大きく異なる点は
テストステロンは 
加齢以外の原因によっても分泌が減少することです

なんと 
肥満 糖尿病や 精神的ストレスが原因で
テストステロン分泌が低下するのです!

肥満 糖尿病や 精神的ストレスが原因で低下するテストステロン


そして 
テストステロンが低値だと 
糖尿病や生活習慣病の発症リスクが増える

テストステロン値と内臓脂肪量の年齢による推移を示したグラフ

40歳代の糖尿病患者さんの40% 
70歳代の患者さんの55%が
低テストステロン血症です

テストステロンが低値だと
インスリン抵抗性になるので
糖尿病になりやすくなる

また 
血管内皮細胞の機能障害がみられるので
動脈硬化の発症リスクが高まる

心血管疾患の死亡率が上昇することも 
明らかにされています


テストステロンには 
血管保護作用抗酸化作用があるためと考えられます

どうやらテストステロンには 
エストロゲンと同様に
生活習慣病の発症を未然に防いでくれる作用が
あるようです

テストステロンもエストロゲンも
同じコレステロールから作られるホルモンで
構造もステロイド骨格という似たようなものなので

働きに類似性があっても 
驚くほどのことではないかもしれません

テストステロン エストロゲンの構造式


で こうしたことから 
テストステロン値は
加齢にともなう生活習慣病関連の
バイオマーカーになる
と考えられています

また 
テストステロンが低下すると
うつ病 認知機能低下 アルツハイマー病などの
リスクが高まり
活力と性機能が損なわれ 
生活の質が低下してしまいます

テストステロンの低下=男性更年期障害 で見られるさまざま病態が 生活習慣病に結びつくことを示した図

さらに厄介なことに
テストステロンの低値は 
心血管病 呼吸器病による死亡リスクを高め

それは 
年齢 BMI 喫煙などとは
独立した危険因子とされています

一方 
高齢者でテストステロンが高値だと
死亡リスクは低値な方に比べ 22%も減少します

テストステロンのレベルと生存率の関係を示したグラフ

つまり 血中のテストステロン値が低いと

*糖尿病や生活習慣病の発症リスクが増し

*うつ病や認知症の発症リスクが増し

*心血管系疾患による死亡率も増してしまう

わけで

中高年男性において
健康診断などでテストステロン値の経年的な測定を行うことの
重要性が注目されています

一方で 
テストステロン値は肥満で低下するけれど
わずかながら骨格筋からも産生されるため
運動によりテストステロン値が増加することも 
明らかにされています

ですから 
生活習慣を改善して 
減量して運動をすれば
テストステロンが増加して寿命も延びる

テストステロンの有用な作用

いやー 正直に告白しますが
男性ホルモンのテストステロンに 
そんな一面があったとは
お恥ずかしいことに 不勉強で知りませんでした

テストステロンさん ごめんなさい

ちなみに 
テストステロンを増やす刺激としては
筋トレ以外にも 
喧嘩や浮気などの不安定な興奮状態もあるそうです

あ 糖尿病や生活習慣病で悩むお父さんに
喧嘩や浮気をお勧めしているわけでは
ありませんよ(苦笑)


高橋医院