先週のロミオとジュリエットから
シェークスピアでつながる話題を
展開しますが


生まれて初めて観たシェークスピア劇は

RSCの来日公演の「真夏の世の夢」でした

確か演出は 
ピーター・ブルック だったかな?

RSC公演の「真夏の世の夢」のパンフレット

小学生の高学年か中学生だったと思いますが

いやー すごく感動しました! 
こんな世界があるのか と思った

初めて聴くメンデルスゾーンの音楽にも 
とても惹かれましたが

何といっても 
いちばんインパクトがあったのは
舞台をかき回す役目を演じた 
妖精パックの存在でした

妖精パック

目覚めていちばん最初に会った人に 
一目惚れさせてしまう

そんな厄介な作用も持つ媚薬を
いたずら半分に 色々な人に振り掛けて

世の恋模様を複雑にして 
その騒ぎを見て楽しんでいる

舞台を掻き回す妖精パック

まさに 
トリックスターの典型ともいえるパックは
ませたガキの心を 
しっかりととらえてしまったのですよ

当時はトリックスターなどという言葉は
知りませんでしたが

それ以来
世間の秩序を破り 世の中をひっかきまわす
いたずら者のトリックスター的存在に 
憧れに近い気持ちを持ってたかな?

なんて 
いやらしいガキでしょう!(苦笑)

ということで 真夏の夜の夢は 
書き手のお気に入りなので

ハンブルグ・バレエ団の来日公演の演目に
真夏の夜の夢があるのを知って 
観に行くことにしました

ハンブルグ・バレエ団の「真夏の夜の夢」のポスター

バレエの真夏の夜の夢を観るのは
初めてですが

ロミオとジュリエットのバレエを観て感じたような
シェークスピアの戯曲を
バレエ化することの違和感があるかなと
一抹の不安は感じていました

で その不安は 
当たったような 当たらぬような、、、

パックや 妖精の王オベロン 女王タイターニアが
活躍する森の場面では
舞台装置が思い切り現代風なデザインに変わり

パック 妖精の王オベロン 女王タイターニアが活躍する森の場面

なんと音楽も メンデルスゾーンでなく
リゲティ・ジェルジュという作曲家の 
現代音楽に変わるのですよ

しかもこの音楽が 
意外に耳触りがよくなくて

さらに 
妖精役のダンサー達の踊り方がとても現代風で
なんだか 
昔流行ったインベーダーゲームの画面を
見ているようでした

確かに 妖精の世界の特異な世界観は 
よく伝わってくるのですが
どうも居心地が悪いというか

パックがいたずらして回る楽しい世界
という雰囲気が伝わってこない

妖精の世界のネガティブな面が 
強調されすぎるような気がしました

ただ これが
観ているうちに徐々に慣れてきて
段々と違和感がなくなり 
むしろ美しさが伝わってくるようになってきます

これは意外で びっくりしました

そして 現実の世界に戻り

ハッピーエンドの大団円の舞踏会を 
儀典長として仕切ったのが
実は妖精のパックだったことが判明し

最後に彼が いたずらっぽく 
例の媚薬を観客に見せびらかして去り

いったん幕が下りたあとに 
再び幕が上がり

現実の世界で婚約した
アテネ公爵シーシアスとヒッポリータの
幸せな様子を 
清楚な踊りで表現したふたりのダンサーが

清楚に踊るふたりのダンサー

妖精の世界で 
王と女王として妖艶なデュエットを踊り

妖艶なデュエット

最後の幕が下ります

この構成には 惹きこまれましたね!

観終わると 
最初はネガティブな印象があった妖精の世界が
むしろこのバレエのハイライトのように感じられました

これはまさに 演出の力でしょう

ハンブルグ・バレエ団を率いる演出家兼舞台監督は 
ジョン・ノイマイヤー

ジョン・ノイマイヤー

書き手は勉強不足で知りませんでしたが
ノイマイヤーさんは 
斯界に名を轟かせる有名な演出家さんだそうで
日本にも熱烈なファンが多いそうです

どうりで 
終演後はお客さんが総立ちのスタンディングオベーションで
あれだけすごいスタンディングオベーションは
久々に見ました

家に戻ってプログラムを読むと
ノイマイヤーさんが
語っていたので印象的だったのは

原作の戯曲の世界を 
忠実にバレエに再現しようとは思っていない

バレエを観た人の想像力に
訴えかけるような世界にしたい

ということと

現実の世界と妖精の世界 
意識と無意識の世界は 
密接につながっていることを 
観る人にアピールしたい

ということ


なんだか お能の世界観のようで 
とても興味深いです

マリンスキーやボリショイのような
正統的なバレエも美しいですが

こういう凝った演出の 
深読みを要求されるバレエも
たまには悪くないと思いましたよ

それにしても 
あの現代音楽 耳に残ります、、、(苦笑)
高橋医院