前回 解説したように 
ビタミンDはさまざまな作用を有していますが

そのなかでもいちばん重要なのが 
骨造りです

書き手が初めてヨーロッパに行ったとき 
もう何十年も前のことですが

街の中で 
杖をついて歩いている方がとてもたくさんいて 
驚いたのを憶えています

杖をついて歩いている人

ヨーロッパの緯度は日本よりかなり高いですから
冬になると日照時間がとても短くなり 
日光=紫外線が足りないので
骨が弱くなって 
杖を使用しなければいけなくなる方が
多かったのでした

初めてその訳を知ったときには 
ホントにびっくりしたものです


で 骨を作るのに 
なぜ日光に含まれる紫外線が必要かというと

前回 説明したように 
紫外線がビタミンDの合成を助けるからです

紫外線によるビタミンD活性化をアピールするイラスト

ビタミンDの体内での合成 について
簡単に説明すると

*まず 皮下脂肪に存在するコレステロールが代謝されて
 プロビタミンD3になり

*紫外線のUV-B(波長280~315nm)により
 プロビタミンD3がビタミンD3に変わります

*ビタミンD3は ビタミンD結合タンパク質によって
 肝臓に運ばれ

*肝臓で25(OH)D3に代謝されます

*ついで 腎臓の尿細管に移送され

*腎臓で
 活性型ビタミンDに変換されます

紫外線によるビタミンD活性化機序

こうして出来た 
活性型ビタミンD
体内の色々な臓器に運ばれ 
さまざまな作用を発揮します

このように 
体内で活性型ビタミンDが作られる出発点は

皮膚に存在するビタミンDの前駆体が 
紫外線によりビタミンD3に変わることです

紫外線の大切さを 
再認識していただけたでしょうか?

さて 最近の国の統計調査によると

日本人の多くは 
ビタミンD が慢性的に不足しているそうで
乳幼児・妊婦・若年女性・寝たきり高齢者等での
不足が指摘されています

日本人女性の年齢別血中ビタミンD濃度と理想の血中濃度

そして 女性でのビタミンDの不足は
紫外線がシミやしわの原因になるとされるため
美容上の観点から紫外線を避ける傾向にあることに
起因するのではないか 
と考えられています

では 体内で必要量のビタミンDを作るために
どれくらいの時間 
外で紫外線を浴びればよいのでしょう?

夏の都内なら 
直射日光を30分浴びれば十分と言われています

お散歩しても 木陰で休んでも良いし
日傘を差していても
半分くらいの量の紫外線を浴びることができますから
ちょっと長めの時間 外にいれば大丈夫です

冬は紫外線の量が減りますから
顔や手に日光を浴びながら
1時間ほど歩くと良いようです

季節ごとの理想とされる日光浴時間

但し 日傘は良いけれど
気をつけなければいけないのが 
UVカット化粧品です

最近では白い肌を保つために
日焼け止めやUVカット化粧品を使う人も
多いのですが

日焼け止めクリームを塗ると 
紫外線がリアルにカットされてしまいます

日焼け止めクリームを塗る女性

SPF30の日焼け止めを塗ると
皮膚がビタミンDを生成する能力が
97%もダウンします

ですから 
外に出るときは必ず日焼け止めクリームを塗るのではなく
1日に30分程度は 直接 紫外線を浴びた方が
ビタミンDを作るためには良いようです

女性の方にとっては 
悩ましい問題かもしれませんが
将来 骨粗鬆症などで悩まなくてすむように 
ご一考いただきたいと思います

ちなみに 書き手が留学していたスウエーデンは 
緯度が高い北の国ですから
夏には 老若男女 
皆が貪欲に日光浴を楽しんでいました

5月くらいになると 
陽当たりのいいバス停や公園で 
シャツを脱いで日光浴をしている人もいて 
ホント びっくりしましたよ

バス停で日光浴する若い女性

もちろん 
日焼け止めクリームは塗っていなかったようです(笑)


高橋医院