骨格筋は
これまで説明してきたように
単に運動するときに働くだけでなく

マイオカインの分泌を介して 
糖や脂肪の代謝に深く関わっていることが
明らかになってきましたが

それにともない 
生活習慣病における運動療法の重要性
新たな視点から見直されるようになっています

そもそも
食事療法運動療法を組み合わせると 
食事療法単独と比べて

*コレステロールの低下

*インスリン抵抗性の改善

*内臓脂肪量の減少

が より程度が大きく効果的なことが
明らかにされていますが

では なぜ 運動すると良いのか?

これまでは「体重が減るから」と
単純に考えられてきました

確かに運動によって
脂肪細胞で脂肪分解が促進して体重は減ります

どうして脂肪が分解されるかというと

運動すると
筋肉内でエネルギー(ATPが消費されて
足りなくなるので

ATPを補充するために
ミトコンドリアで
脂肪やグルコースを材料にATPが産生されます

このように
脂肪がエネルギー源として使われるので
体重が減るのです

運動開始直後は いわゆる無酸素運動状態

備蓄されたグリコーゲングルコースに変換されて
グルコースが原料となり
ATPが産生されますが解糖系

解糖系はATP産生効率が悪いので
数分しか効果を発揮できません

無酸素運動の特徴


しかし運動を継続していくと
有酸素運動状態となり

交感神経が活性化されて
分泌されたカテコラミンが
脂肪細胞に作用して
脂肪細胞内に備蓄されていた脂肪が分解され
遊離脂肪酸として放出され

それが材料として使われて
酸素存在下でミトコンドリア内で
TCA回路電子伝達系によりATPが産生されます


有酸素運動の特徴

こうして脂肪が減って体重が減る

有酸素運動 無酸素運動の酸素消費量の時間的差異の解説

しかし最近は 
運動の効果は体重減少によるものだけでなく

運動によって骨格筋そのものに

*ミトコンドリアの増加

*筋肉の質の変化

*インスリン感受性の増加

*マイオカインの分泌

といったさまざまな変化が起こることで
全身の代謝が改善されることが重要と
考えられています

つまり
運動を習慣として継続して行っていくと
次のようなことが起こります

@骨格筋の質が 速筋から遅筋優位に変化する

遅筋が増えると既に解説したように
糖や脂質の代謝が
積極的に行われるようになります

@ミトコンドリアの量が増え 機能が亢進する

ミトコンドリアが活性化されると
運動時に亢進している脂肪組織での脂肪分解により
放出された遊離脂肪酸が処理されやすくなり
脂質の代謝が盛んになります

@糖を骨格筋内に取り込む作用を有するGLUT4 量が増加する

血糖の骨格筋への取り込み能力が増加して
インスリン感受性が改善します

@マイオカインの分泌が活発になる

分泌されたマイオカインの働きにより
骨格筋や全身での糖や脂質の代謝が
より活発になります

トレーニングの継続が
生活習慣病の予防につながることが
より論理的に説明できるようになってきたわけです

筋トレをしたり
ウォーキングをしたりしているときに

自分の骨格筋の内部で 
赤い筋肉が増えて
ミトコンドリアが増えて 
マイオカインが産生されて
そうした結果 余分な糖や脂肪が消費されている

そんなイメージをしたら
なんとなく楽しくて
より継続できるような気がしませんか?

書き手のような
体を動かすことが少ない理屈っぽい人には
運動習慣の良い動機付けになると思いますが
いかがでしょう?(苦笑)


高橋医院