ヒトの体質を知らぬ間に決めているという 
エピジェネティクス

いったい 何なの?

実はエピジェネティクスは
お母さんのお腹のなかにいるときの
メタボリック・メモリー形成だけでなく

さまざまな重要な生命現象や 
病気の発症に関わっている遺伝子の修飾です


@発生や細胞の分化

お父さんの精子とお母さんの卵子が誘導してできた 
ひとつの受精卵から
どうやってヒトの体
つまり脳とか心臓とか肝臓とか手とか足が
できてくるのか?

この根幹的な生命現象に 
エピジェネティクスは深く関与しています

@再生

最近注目されている再生の現象は
まさに細胞の分化と深い関わりがありますから
当然 再生にもエピジェネティクスは深く関わります

@老化

老化にも
エピジェネティクスは関与していると
考えられています

エピジェネテイクスが関与する老化などの生命現象の説明図

@生活習慣病 がん

毎日の生活習慣 食事・運動・ストレスなどの
環境因子によって 
その発症が大きく影響されている 
がん 生活習慣病などの病気の原因にも
エピジェネティクスは深く関与しています

@学習 記憶 ストレス反応

後天的な環境により影響される 
学習や記憶 ストレス反応
こうした現象の成立にも
エピジェネティクスは関与していると
推測されています

もっと具体的な例では
同じ遺伝子を持っているふたご 
一卵性双生児が 
どうして大人になって性格が違ってきて 
罹る病気が異なるのか?
その理由がエピジェネティクスで説明できると
考えられているのです

エピジェネティクスのイメージ 
少しできましたか?

ダラダラと思わせぶりに
エピジェネティクスが関与する現象について
書き並べましたが

これらのなかで注目すべき重要なポイントは
細胞分化双子の成長後の差異です

@細胞の分化

体の色々な臓器を形成する細胞
例えば 心臓の細胞も 脳の細胞も
それぞれ同じ受精卵から 
分化して出来てきます

ですから
心臓の細胞も脳の細胞も 
核には
受精卵と同じ遺伝子が存在していますが

それぞれの細胞は 
核に存在する全ての遺伝子を
利用しているわけではありません

細胞の種類によって 
働いて(利用されて)いる遺伝子
働いていない(利用されていない)遺伝子
のパターンが異なります

このパターンの違いにより
心臓の細胞や脳の細胞が 
それぞれ分化してくるのです

そして
分化した細胞が使っている遺伝子は
実は全遺伝子の20%以下なのです

細胞の分化とエピジェネテイクスの関連の説明図

こうした
細胞による遺伝子の利用され方のパターンを
規定するのが
エピジェネティクスです

@双子は大人になってから同じ病気になるか?

一卵性双生児
2人とも全く同じ遺伝子を有していますが

仮にある病気の発症に関わる遺伝子を
2人とも持っていても
その遺伝子が発現しているかいないかは 
個人により異なる可能性がある

そして 
その遺伝子発現の制御に
環境因子が関与している可能性がある

だから 
双子だからといって 
2人が大人になって同じ病気に罹るわけではなく
この違いを規定しているのが 
エピジェネティクな遺伝子修飾です

双子の遺伝子発現とエピジェネテイクスの関連を説明す図


イメージすることができるでしょうか?

つまり エピジェネティクスとは

*DNAの塩基配列の変化をともなわない

*後天的修飾によって引き起こされる
 染色体の変化

あって

*これにより遺伝子発現パターンが制御され

*そのために細胞の性質(表現型)が規定される

ことで

エピジェネティクスにより

*DNAの情報は変わらないのに

*細胞の性質(表現型)が変化し

*これが個体の生涯において 
 細胞分裂を越えて保存され 記憶され継承される

のです

そして 
このような後天的なDNAの変化エピゲノムと言います

ゲノムの全遺伝子配列が明らかになり
ゲノム解析により
DNAそのものの変化による先天的な異常
明らかにすることができるようになりましたが

次のステップとして非常に重要なのが

生活習慣の変化などの後天的な影響によって
DNAの発現パターンどのように変化しているかを
明らかにすることで

そのためには 
エピジェネティクス動態の解析であるエピゲノム解析が
非常に重要になります

エピゲノム解析の説明図

まさに
これからの生命科学 医科学 医療の
ホットなトピックのひとつです

では 
エピジェネティクな遺伝子の修飾においては
具体的にどのようなことが
起こっているのでしょうか?

次回はその点について説明します


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