橋本病は

*本当は橋本病なのに 
 ほかの病気と間違えられている

*橋本病が疑わしいけれど 
 経過観察でも良い

*橋本病とは言い切れないけれど
 治療した方が良い
 
といったことがあります


<橋本病なのに 他の病気に間違えられて見逃されてしまう>

本当は橋本病なのに 
以下の病気と間違えられて
見逃されていることがあります

*心臓病・腎臓病・肝臓病

著しい甲状腺機能低下症が
長い間治療されないでいると

全身がむくんだり 
心臓周囲に水が溜まって
心臓の働きが悪くなることがあり

心臓 腎臓 肝臓の病気と間違えられて 
治療されていることがあります

*老化

むくんだり 皮膚が乾燥したり 寒がりになり
動作が鈍く しゃべり方がゆっくりになり 
記憶力が低下するので
老化現象と間違われていることがあります

*うつ病 更年期障害

無気力になったりするので 
うつ病や更年期障害に間違えられます

こうした場合には
疑われた病気として治療をされても 
なかなか症状が改善せず
治療困難な例として 
そのまま放置されてしまうことが少なくありません

そして 正しい診断がついて 
甲状腺製剤の治療を開始すると
それまでなかなか治らなかった症状が 
嘘のように改善したりします

ですから 
思い当たるふしがある場合は
甲状腺の血液検査をすることをお勧めします

他の病気と間違えられる原因となる橋本病の症状の一覧表

<橋本病が疑わしいけれど 経過観察で良い場合>

潜在性甲状腺機能低下症
と呼ばれる病態があります

甲状腺ホルモン値は正常だけれど 
TSHが上昇している場合
比較的 高頻度に認められます
(下の図の 2.潜在性低下 に相当します)

甲状腺ホルモン分泌が 
正常な状態から低下していく状態への移行期で
甲状腺の機能低下が始まっているけれど 
まだ余力がある

甲状腺ホルモンの
わずかな分泌低下を察知した下垂体が
TSHを分泌して甲状腺を刺激しているので
甲状腺ホルモンが基準値を保っていられる

いわば橋本病の予備軍のような状態です

さまざまな病態におけるFT4 TSHの経時的変化

自覚症状はないので 
すぐに治療が必要ではありませんが
定期チェックを慎重に行い

まずは日常の食べ物の注意をする必要があります

というのも 
ヨウ素の過剰摂取により
起こっている可能性もあるからで

昆布などの大量のヨードを含む食品を
3ヶ月間は控えます

ヨードを控えてもTSHが10μU/ml以上なら 
甲状腺剤治療を開始します


<完全な橋本病ではないけれど 治療した方がいい場合>

一方 TSHが10μU/mL以下でも 
治療を考えるべき場合があります

@TSHが10μU/mL以下でも ぜひ治療をすべき場合

*高血圧
*糖尿病
*脂質異常症
*喫煙

のいずれかがあれば
動脈硬化が進む可能性があるので 
治療を開始します

@TSHが10μU/mL以下でも 治療を考慮すべき場合

*機能低下症状がある
*甲状腺腫が大きい
*自己抗体が強陽性
*不妊症

こうした場合は 治療を考慮すべきとされています

@妊娠の場合 妊娠を望む場合
 
妊娠している場合 
近い将来に妊娠を望んでいる場合は
すぐに甲状腺ホルモン剤治療を開始します

というのも
妊娠初期の甲状腺ホルモン低下により 
流産の確率が上がり
胎児の精神神経機能発達にも悪影響があるからです

妊娠・出産と甲状腺疾患については 
次回詳しく説明します


高橋医院