多趣味無根気の書き手も 
現代芸術にはあまり興味がありませんが

7月初旬のある晩 森美術館で開催されていた
「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」
を見に行きました

シンプルなかたち展のポスター

美術館が夜10時までオープンしてくれているのは
時間貧乏モノには本当に助かります

美術館に入る前に 
夕暮れの東京の景色を楽しみます

梅雨空の厚い雲の隙間から 
夕焼けの赤い光が少し漏れていて
ちょっとシュールな雰囲気でした 
(ピンボケ失礼!:苦笑)

夕暮れの都心

この企画展に行きたかったのは
ポスターにも描かれている
ブランクーシの鳥をナマで見たかったから

現代芸術に詳しくない書き手も
西洋美術史の教科書で
この彫刻を初めて見たときは
かなりの衝撃を感じました

ブランクーシの鳥

まさに シンプルなかたち

このブランクーシの彫刻を
見に行ったようなものでしたが

こうした抽象的なコンセプトの企画展を
アレンジされたキュレーターさんに敬意を表して

まずはその意図を 
ガイドブックの解説から読み取ることにします

キュレーターさんが目指すのは

分野や時代を超えた普遍的なテーマとしての
シンプルな美学 

を示すこと

それは
誰もが共有し得る本質的で普遍的な価値観で
静謐かつ詩的で普遍的な美で
多様性の先に見出すべきもので
いかなる個別性も剥ぎとられ 
物の本質へと還元されたかたち

装飾の横溢や官能的な奢侈を放棄することで
かえって何一つ不足を感じさせない
内省的な尊厳を獲得しており
余計なものを削ぎ落とした純粋なかたちは完全である

ガイドブックに記されているこの解説

うーん わかるような わからないような 
微妙なところです(苦笑)


そして シンプルな美が示されるものは

*自然の中や 多くの国の伝統文化 民族芸術

*自然やその根底に宿る 科学的な原理や形態

*近代が産んだ産業製品の機能美 効率性

ということで

その分類に沿って 
企画展は以下の9つのパートに分かれていました

形而上学的風景
 
孤高の庵
 
宇宙と月
 
力学的なかたち
 
幾何学的なかたち
 
自然のかたち

生成のかたち
 
動物と人間
 
かたちの謎

どの分野に 
いちばん興味を持たれますか?

展示作品を見ていて 
書き手がいちばん興味を持ったのは
このプロペラ

プロペラ

1912年 パリで開かれた航空ショーで
展示された飛行機のプロペラを見た
マルセル・デユシャンは驚愕し

マルセル・デユシャン

「絵画は終わった 
 このプロペラに勝るものをいったい誰が作れるか?」

と まわりの仲間に問いかけたそうです

えーっ このプロペラを見て 
デユシャンはそんなことを思ったの?

書き手はそのことに 本当に驚きました

文明の利器である飛行機のプロペラには
確かに高度に抽象化された形で
効率性は表現されているかもしれませんが

そこに「美の本質」を見出すの、、、

芸術家の感性は 
凡人にはうかがい知ることができません

確かにプロペラは 
機能美を表現しているかもしれませんが
それは発明者が意識すらしなかったであろう“美しさ”で

プロペラの製作者は 
デユシャンがそう評したことに
驚いたのではないでしょうか?


もう1点 驚いたのが
その場にいたプランクーシは 
デユシャンの問いかけに答える形で
件の鳥の彫刻を作成し始めたとのことです

ブランクーシのあの彫刻が
そうしたデユシャンの言葉に
インスパイアされて生まれてきたことも
とても印象的でした

鳥さんを見る視線に含まれるものが
ちょっと変わったような気もします?(苦笑)


近代絵画の祖と言われるドミニク・アングル
19世紀に流行し始めた写真を
「画家の生活を脅かすもの」と見做して
政府に禁止するように抗議したという話を 
ふと思い出しました

近代の黎明期に活躍した芸術家たちは 
色々と思い悩むことが多かったのでしょうね

美とは何なのか?

美術館を出て 
東京タワーの幻想的な夜景を見ながら 
ビールを飲みつつ

東京タワーの幻想的な夜景

柄にもなく 
ふと そんなことを思ったりしました

そんな面倒くさいこと 
どうでもいいですよね?(苦笑)


ちなみに 
一緒に行かれた方がお気に入りだったのが この展示

変幻自在に漂う波動

明暗のなかでゆらゆらと
変幻自在に漂う波動は
確かに見ていて飽きませんでした


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