高血圧の患者さんは 
診察終了時に「血圧手帳」を渡されて

家で測定した血圧の値をこれに記録して
次回見せてください
と言われたことがあることでしょう

診察室で血圧を測ったのに
家でも測る必要があるの? 

と不思議に思われる方もおられると思いますが

家庭で血圧を測って記録していただくことは
とても重要な意義があるのです


というのも
白衣高血圧という現象があって

病院や医者の前では
緊張して血圧の値が実際より高くなってしまう
ことがあるのです

白衣高血圧のイラスト

その点 家ではリラックスして測定するので
リアルな値を把握することが出来ます


家庭血圧と診察室での血圧

家庭血圧は
診察室血圧より5mmHgほど低いとされています

診察室での血圧と家庭での血圧が異なる場合は
家庭での血圧値が診断に用いられます

家庭血圧値は
診察室血圧値より予後予知因子として優れている
との報告もあります

また これも大事な点ですが
 
家で血圧を測っていただくことは
患者さんが血圧に関する意識を持ち
治療への理解を深めていただく動機付け
としても有用です


逆に 診察室での血圧より
家庭での血圧の方が高い場合もあります

このようなケースは
仮面高血圧と呼ばれますが

診察室での血圧だけでは見逃されてしまいます

仮面高血圧と白衣高血圧

仮面高血圧は
診察室血圧が正常な人の10~15%に見られます

*早朝に血圧が高くなる場合
*夜間に血圧が高くなる場合
*昼間に血圧が高くなる場合

がありますが

仮面高血圧の血圧の日内変動

早朝高血圧は
心筋梗塞などの危険因子になりますので注意が必要です
(早朝高血圧については次回詳しく説明します)

夜間高血圧は
心臓 腎臓 自律神経に障害がある方に多く
睡眠時無呼吸症候群でも夜間血圧は上昇します

昼間に職場や家庭で血圧が上がる場合
精神的ストレスが関与していることが多いようです

仮面高血圧の原因

注意が必要なのは
高血圧の薬による治療をしていて
診察室での血圧が140/90mmHg未満で
コントロールが良好
とされている患者さんの

20%ほどが仮面高血圧であることです

降圧薬治療を受けている人のなかでの仮面高血圧の人の割合

ですから
たとえ診察室での血圧が良好でも

家庭血圧を測定しないと
治療効果が不十分なことを
見逃してしまうリスクがあります

喫煙者 
お酒をたくさん飲む
ストレスが多い
心拍数が多い
肥満
糖尿病
メタボ
 
といった方が仮面高血圧になりやすいので
そうした方は
是非とも家庭で血圧を測定してください


また 家での血圧測定は
朝と夕方または寝る前の測定をお願いしますが

これにより
危険な早朝高血圧を見逃さずに
診断することが出来ます


このように
家庭での血圧測定は色々と有意義ですが
実際に測定する際に
注意していただきたい点があります

まず使用する血圧計ですが
手首より
上腕に巻くカフを巻くタイプの方が正確です

測定するときの姿勢は
・イスに腰をかけて 1-2分安静にしてから
・カフを巻く上腕は心臓の高さで
・カフは肘の少し上に巻いて
・いつも同じ姿勢で測定してください

血圧の正しい測定法


朝の測定のポイント
・起きてから1時間以内
・トイレをすましたあと 朝ごはんの前 薬を飲む前
・イスに座って1-2分落ち着いたあと
に測定します

朝の血圧測定のポイント


朝だけでなく夜にも測っていただいて
朝と夜の家庭血圧が比較できると
とても有意義な情報になります

夜の測定のポイント
・夕食後2時間以上経過したあとか
 できれば就寝前
・トイレに行ったあと
 イスに座って1-2分落ち着いてから測定する

測定は原則として2回行い
その平均値を記録します

毎日の測定が理想ですが
無理をする必要はありません


また
測定した数値そのものについて
とても心配される方がおられますが

1回1回の測定値の高低に
神経質にならないように気をつけてください

血圧はちょっとしたことで変動するものです

だからこそ毎日記録していただくことが大切なので
値にこだわらないようにしてください


いちばん気をつけていただきたいことは

血圧を下げる薬を既に飲まれている方が
家庭血圧の値が良いからという理由で
自己判断で薬を飲まれるのを
やめてしまうことです

そういう患者さんは少なくないのですが
これは大変に危険なことです

薬を飲まれているから値が良いのであって
急に飲むのをやめると反動で血圧が急上昇して
脳出血を起こす危険性すらあります

この点だけは充分にご注意ください
高橋医院